民法の相続法の規定に関する法律改正

平成30年民法(相続法)改正の骨子

【民法及び家事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)】
相続法という法律はありません。民法という法律の第5編に相続に関する決まりがあります。
今般その相続に関する部分が大幅に改正されました。

 

 

大きく6つの部分にわかれます。
1.配偶者の居住権の保護に関する改正
 (新民法1028条〜1041条・施行日令和2年4月1日)
2.遺産分割等に関する改正
 (新民法903条4項,906条の2,909条の2関係・施行日令和元年7月1日)
3.遺言制度に関する改正
 (新民法968条関係・施行日平成31年1月13日/新民法1007条,1012条〜1016条関係施行日令和元年7月1日)
4.遺留分制度に関する改正
 (新民法1042条〜1049条関係・施行日令和元年7月1日)
5.相続の効力等に関する改正
 (新民法899条の2,902条の2関係・施行日令和元年7月1日)
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための改正
 (新民法1050条関係・施行日令和元年7月1日)

 

 

また,遺言書保管法(法務局における遺言書の保管等に関する法律)も成立し,平成30年7月13日に公布されました。
施行日は令和2年7月10日です。相続をめぐる紛争防止という観点から,新たに設けられた制度です。

施行日及び経過措置

原則は令和元年7月1日ですが,施行日が異なるものもあります。
配偶者居住権に関する部分は,周知期間を長めにとっていて,令和2年4月1日が施行日です。

 

 

同様に,遺言書保管法も周知期間や制度準備のために,令和2年7月10日が施行日となっています。
逆に,自筆証書遺言の方式緩和に関する部分はもう開始されています。
以前の記事で紹介した通りです。(民法968条改正

 

 

施行日よりも前に相続が開始した場合は,改正前の法律を適用します。(旧法主義)
自筆証書遺言の方式緩和の例で言うと,施行日前の平成31年1月12日に財産目録をワープロで作成し,そのほかの部分を要件に従った方法で作成したときは,新法は適用されないので,自筆証書遺言の様式性を満たさず,無効な遺言であると考えられることになります。
平成31年1月13日の施行日以後に作成された自筆証書遺言に新法が適用されるのです。
ただし,新法を適用すると規定されているものもあるので注意が必要です。(例:新民法909条の2,1007条2項等)

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