被相続人が海外居住または外国籍である。
相続人が海外居住または外国籍である。
海外に被相続人名義の財産がある。
上記のような場合には国内の手続きと異なる部分が出てきます。
それぞれの概要を把握しましょう。
適用法の確認
当事者の国籍、住所、財産の所在地が地域的に二つ以上の国に関連する法律関係において、どこの法律を適用するか⇒国際私法による調整
日本の国際私法⇒法の適用に関する通則法、遺言の方式に関する法律、扶養義務の準拠法に関する法律
法の適用に関する通則法第36条により相続は被相続人の本国法によると定め。
本国法とは相続発生時において被相続人の有していた国籍の法律。
日本において日本国籍者が亡くなれば日本の民法が適用。
日本において米国籍者が亡くなれば米国の相続法規が適用。
しかし必ずしも各国の法律の内容が一致するとは限らない。
外国の法律が適用される場合にはその外国の法律を確認。
国際私法の消極的抵触への対策として反致
反致主義⇒自国の国際私法だけではなく他国の国際私法も考慮して調和を図る
反致否認主義⇒他国の国際私法は考慮しない
各国で財産の承継に関し、考え方が以下のように異なる
包括承継主義⇒被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も包括的に相続人に承継される
採用国例)日本・ドイツ・イタリア・フランス・スイス等
相続人が各種の手続きを実施。遺産の帰属先決定は相続人間で遺産分割。
管理清算主義⇒被相続人の債権債務を清算し、プラスの財産を相続人が取得。
採用国例)アメリカ・イギリス・シンガポール等
原則プロぺードが必要。裁判所から選任された人が清算し、遺産税や費用を差し引いて取得者に財産移転
相続統一主義⇒相続財産の種類を区別しない。人の側面重視。主に大陸法系諸国で採用
本国法主義→被相続人の国籍がある法律が基準法(日本・ドイツ・イタリア・韓国等)
住所地法主義→被相続人の住所地が基準法律(チリ・アルゼンチン・デンマーク等)
相続分割主義⇒不動産と動産で適用される準拠法を区別。物の側面を重視。英米系法系諸国、フランス、ベルギー、中国等
不動産→不動産の所在地法を適用
動産→被相続人の本国法又は住所地法を適用
実務上は海外の財産は海外の法律に則って手続きが進められることも多く、統一的な解決が徹底されない現状も有。